異常になった腸内細菌叢が劇的に機能回復するメカニズムを明らかに 糞便移植治療によって腸内細菌叢が機能回復するメカニズムを解明 ?抗菌薬投与によって起こる再発性C. difficile関連腸炎の治療に光~
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この研究発表は下記のメディアで紹介されました。
◆2/13 日経電子版
◆2/19 日経産業新聞
◆2/24 日刊工業新聞
◆3/4 日刊工業新聞
◆3/7 NHKニュース
本研究のポイント
◇抗菌薬などの投与によって腸内細菌叢が異常になって起こる再発性Clostridioides difficile (C. difficile)関連腸炎の治癒メカニズムを解明した。
◇再発性C. difficile関連腸炎患者の糞便移植治療前後およびドナー糞便の腸内細菌叢およびウイルス叢を解析した。
◇糞便移植治療前は、悪い腸内細菌がはびこっており、腸炎を誘導していた。
◇健常者の糞便を移植することで、腸内細菌とウイルスが相互に作用し、障害された機能が回復した
概要
沙巴体育平台大学院医学研究科 ゲノム免疫学の植松智教授(東京大学医科学研究所附属ヒトゲノム解析センター メタゲノム医学分野 特任教授、附属国際粘膜ワクチン開発研究センター 自然免疫制御分野 特任教授を兼務)、藤本康介助教(東京大学医科学研究所附属ヒトゲノム解析センター メタゲノム医学分野 特任助教、附属国際粘膜ワクチン開発研究センター 自然免疫制御分野 特任助教を兼務)、東京大学医科学研究所附属ヒトゲノム解析センター 健康医療インテリジェンス分野の井元清哉教授らの研究グループは、ブリガム?アンド?ウィメンズ病院のJessica Allegretti博士を中心とする研究チームと国際共同研究を行い、再発性Clostridioides difficile関連腸炎患者の糞便移植治療の前後およびドナー糞便の腸内細菌叢と腸内ウイルス叢を詳細に解析しました。
C. difficile関連腸炎は抗菌薬関連下痢症として知られています。治療にはバンコマイシンやメトロニダゾールといった抗菌薬が用いられますが、特に欧米諸国では再発性?難治性になることが多く、米国では年に数万人の死者が出ています。近年では、再発性C. difficile関連腸炎に対し、健康な人の糞便を内視鏡などを使って腸管内に注入する糞便移植治療※1が非常に効果的であり、実践されています。しかし、糞便移植治療がどのように再発性C. difficile関連腸炎に影響を与え、その病気の改善につながるのか、十分に解明されていませんでした。
本研究グループは、糞便移植治療が乱れていた腸内細菌と腸内ウイルスの構成比や感染関係を劇的に変化させるだけでなく、腸内細菌叢の機能回復にもつながることを示しました。
本研究成果は2月10日(日本時間)に国際科学雑誌『Gastroenterology』(IF=17.373)にオンライン掲載されました。
補足説明
?※1 糞便移植治療…健康な人の糞便に含まれている腸内細菌(乱れていない腸内細菌)を病気の患者に投与する治療法です。欧米を中心に行われている治療法で、特に再発性C. difficile関連腸炎に対して非常に有効だと報告されています。健康な人の糞便を生理食塩水で懸濁し、濾過した後、内視鏡を用いて腸管内に散布します。
掲載誌情報
発表雑誌:Gastroenterology (IF=17.373)
論文名:Functional Restoration of Bacteriomes and Viromes by Fecal Microbiota Transplantation
著者一覧:Kosuke Fujimoto1,2,3, Yasumasa Kimura4, Jessica R Allegretti5, Mako Yamamoto6, Yao-zhong Zhang6, Kotoe Katayama6, Georg Tremmel7, Yunosuke Kawaguchi1, Masaki Shimohigoshi1, Tetsuya Hayashi1, Miho Uematsu1, Kiyoshi Yamaguchi8, Yoichi Furukawa8, Yutaka Akiyama9, Rui Yamaguchi7, Sheila E. Crowe10, Peter B. Ernst11,12,13, Satoru Miyano7, Hiroshi Kiyono11,12,14,15, Seiya Imoto6,16* and Satoshi Uematsu1,2,3,16* (*責任著者)
資金?特許等について
本研究は、武田科学振興財団研究助成、キヤノン財団研究助成、JST COI STREAM東京大学V1拠点「自分で守る健康社会」、HPCI戦略プログラム 分野1「予測する生命科学?医療および創薬基盤」の一環として行われました。