光可逆にらせんを形成する結晶を世界で初めて発見!
沙巴体育平台大学院工学研究科の小畠誠也教授(化学生物系専攻)の研究グループは、光によってらせんを形成する微小な結晶を発見しました。これにより、近い将来、光エネルギーを機械エネルギーに変換し、光によって駆動する微小な機械が開発される可能性が出てきました。本研究の成果は、Angewandte Chemie International Edition オンライン版(7月19日:ドイツ標準時間)に掲載されました。
発表雑誌
【発表雑誌】Angewandte Chemie International Edition
【論文名】
“Photoinduced Twisting of a Photochromic Diarylethene Crystal”
「フォトクロミックジアリールエテン結晶の光誘起らせん形成」
【著者】
沙巴体育平台工学研究科教授 小畠 誠也(こばたけ せいや)
【掲載URL(英語版)】
http://dx.doi.org/10.1002/anie.201304670
※本論文は、VIPとしてonline上にAbstractが掲載されました。
本研究のポイント
- 紫外光と可視光を当てることにより、光可逆的にらせんを形成する有機結晶を発見した。
- 発見された有機結晶は髪の毛の1/10程度の大きさであり、光により瞬時にらせんを形成する。
研究概要
紫外光と可視光を当てることにより、光可逆的にらせんを形成する有機結晶を世界で初めて発見しました(図1)。この有機結晶は、「ジアリールエテン」と呼ばれるフォトクロミック化合物で構成されており、光によって分子構造が変化し、その結果、結晶形状が変化します。このような現象はフォトメカニカル効果と呼ばれます。
(図1) ジアリールエテン1a結晶が紫外光 (UV)と可視光 (Vis.)によって可逆にねじれを形成する様子
本研究グループは既に2007年「Nature」にジアリールエテン結晶の光照射による可逆的な結晶形状変形および屈曲を報告しています。それ以降、様々なフォトクロミック化合物の結晶のフォトメカニカル効果が研究されてきました。今回、ある種のジアリールエテン誘導体結晶に光を当てるとらせんを形成することを発見しました。紫外光と可視光を交互に当てることによって、らせん形成および元の結晶へと可逆的に変化し、30回以上繰り返しが可能でありました。らせんの向きは左巻きと右巻きの両方が存在しており(図2)、らせんの向きは光照射される結晶の面によって変わることが明らかとなっています。人間の左手と右手のようなキラリティ(対掌性)が結晶自身に存在しないにも関わらず、左巻きと右巻きというキラリティ(対掌性)を作り出すことに成功しています。
(図2) ねじれの定義を表す図(左巻きらせんと右巻きらせん) 実際の結晶では紫外光照射される結晶面によって左巻きらせんか右巻きらせんが決まる
見込まれる効果
このようなフォトメカニカル(光によって駆動する)材料は、電気配線?回路が不必要であり、非接触かつ遠隔操作できるため非常に注目を集めています。今回発見された有機結晶は髪の毛の1/10程度の大きさであり、毛細血管の中も動き回ることができる大きさです。光可逆的らせん形成は、微小な機械の部品としてドリルやスクリューのような役割を果たす可能性が考えられ、小型医療機器などの新しい可能性が現れてきました。
Angew. Chem. Int. Ed. について
Wiley-VCHから出版されている学術雑誌であり、化学分野における最高峰の学術雑誌の1つです。 IF = 13.734(2013年)
VIPについて
Very Important Paperの略であり、論文審査に関わった査読者2名がVery Important Paper(上位5%以内)を指摘したときに、VIPとしてonline上に最速でAbstractが掲載されます。すなわち、VIP は重要度が上位 5%以内と評価された論文と考えることができます。
論文?研究内容に関するお問い合せ先
沙巴体育平台工学研究科教授 小畠 誠也(コバタケ セイヤ)
Email: kobatakea-chem.eng.osaka-cu.ac.jp
※本件に関する問い合わせはメールでのみ受付します