動物の喪失が熱帯林の多様性に与える影響の研究にScience誌も注目
本学理学研究科の伊東明教授らが参加する国際チームは、狩猟などによって熱帯林から動物がいなくなると、熱帯林の樹木群集の多様性が減少してしまう恐れがあることをEcology Letters(Blackwell Publishing)で報告し、海外メディアからも注目されています。
本論文は、アメリカのスミソニアン熱帯林研究センター(Stuart Davies博士、Sylvester Tan氏)と大阪市大(伊東)、マレーシアサラワク森林局の3カ国共同研究グループが1990年からボルネオ島で継続している長期研究のデータに基づいた成果です。この研究グループは、スミソニアン熱帯林研究センター(CTFS)が中心となって世界の森林で実施している国際ネットワーク研究「A Global Program for Long-Term Large-Scale Forest Research」 にも属しています。
国際チームは、ボルネオ島の熱帯雨林(ランビルの森)を15年間にわたって詳細に追跡調査し、急速に動物が減ってしまった森の変化を明らかにしました。種子や実生を食べる動物が減ったため、樹木の稚樹の数が増える一方で、多様性は下がってしまいました。また、動物が種子を散布する樹木では、散布者がいなくなったために稚樹が集まって分布するようになりました。同じ種が集まると病気や虫害のリスク上がるため、将来、こうした種の個体数は減ってしまう危険性があります。動物の喪失が熱帯林の多様性に与えた影響を具体的に示した研究は、これが初めてですが、同様の状況は世界中の熱帯林ですでに起きている、あるいは、今後起きる可能性があり、更に多くの研究が必要です。
理学研究科 植物機能生態学 教授 伊東 明
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