「まちのコモンズ」が第8回日本都市計画家協会賞関西支部賞を受賞
平成22年6月19日、沙巴体育平台都市研究プラザが運営する船場アートカフェと、北船場の町会が実施しているイベント「まちのコモンズ」が第8回日本都市計画家協会賞関西支部賞を受賞しました。日本都市計画家協会賞は、魅力ある空間と豊かな文化のまちづくりのための優れた活動を応援することを目的とした賞です。
船場アートカフェは都市研究プラザの現場プラザのひとつで、大阪の都心である船場で「芸術による都市再生」をテーマに、アートのもつ「接合する力」と「媒介する力」に焦点をあて、都市におけるアートの可能性を追求しています。
「まちのコモンズ」について、工学研究科の嘉名光市准教授(船場アートカフェディレクター)、都市研究プラザの高岡伸一特任講師(船場アートカフェ事務局)にお話を伺いました。
―日本都市計画家協会賞の公募に応募されたきっかけは何でしょうか
嘉名准教授(以下敬称略) われわれ船場アートカフェの研究内容を、社会に知ってもらいたかったということが一つ。そして二つめの理由は、「まちのコモンズ」に取り組んでくださっている町会のみなさんに、自分たちの活動が社会で評価されるんだという実感を持っていただきたかったからです。
―現在、全国各地で「まちづくり」「まちの魅力の再発見」のイベントが盛んに行われています。その中で、船場アートカフェや「まちのコモンズ」はどのような点がユニークなのでしょうか。
高岡特任講師(以下敬称略) 船場アートカフェの取り組みは、アートを取り入れた「まちづくり」であるという点が新しいと思います。利害関係を超える力を持っているアートを利用することで、まちづくりがスムーズに進むと考えています。
嘉名 また、船場アートカフェに限らず、都市研究プラザの現場プラザは全てそうですが、「まちの中にとことん入り込んでいく」というスタイルもユニークです。現場プラザのスタイルは、大学などがスペースを設けてイベントを企画し、そこに市民の方々の側から集まってもらうというものではありません。こちらから現場に入り込んで、地域の特性を把握したうえで、地域にあったまちづくりを住民のみなさんと一緒にやっていくことが、現場プラザの特徴です。
高岡 もちろん「まちのコモンズ」も、船場の町会や企業のみなさんと一緒に作りあげています。三井ガーデンホテル前の公開空地での演奏会、料亭の吉兆の従業員のみなさんによる餅つきなども開催しています。
―「まちのコモンズ」の参加者の方はどういった方が多いのでしょうか。また、どれくらいの方が参加されているのでしょうか。
高岡 会社員から学生まで、さまざまです。まちづくりに興味があって来てくださる方だけではなく、会社帰りに、演奏会の前でふっと足をとめていく人も多いですよ。特に昨年実施した餅つきは大好評で、300人くらい集まりました。
嘉名 今後は、ふと足をとめてくれる人を、もっと増やしたいですね。わたしたちは、船場という場所が持つ豊かな文化的資源を社会に広め、船場をもっと活気あるまちにしたいと思っています。そのためには、もともとまちづくりに興味がある方々だけでなく、あまりまちづくりに関心がなかった人にも船場に目を向けるきっかけを提供して、裾野を広げていくことが大事ですから。
―「まちのコモンズ」のまちづくり効果をどのように感じておられますか
高岡 「まちのコモンズ」を通じて、船場の中にあらたな人間関係ができてきています。例えば、今まで全く接点のなかった、町会長さんと三井ガーデンホテルの支配人の方が、このイベントを通して知り合い、今では一緒に掃除活動をしておられます。
嘉名 まさに、船場アートカフェがつくりたかった「新しい都市型のコミュニティ」が、つくられてきていると思います。